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1-256QAMについて
1ページ目からのつづきです。
256QAMの説明に行く前に、”コンスタレーションダイヤグラム”について説明いたします。
デジタル変調では、電波の位相角度と振幅に情報を乗せます。位相角度と振幅をわかりやすく表現したのがコンスタレーションダイヤグラムです。
三角関数を習われた時に位相角度と振幅をXY平面で表現したと思います。



2値ASKであれば、位相角度は変えずに振幅ON/OFFの切り替えを行います。この様子をXY平面に表したものが2値ASKのコンスタレーションダイヤグラムです。



2値PSKであれば、振幅は変えずに位相角度の0度/180度の切り替えを行います。この様子をXY平面に表したものが2値PSKのコンスタレーションダイヤグラムです。


無線LANの実験で使う256QAMのコンスタレーションダイヤグラムはXY平面に等間隔に点を並べたものです。
コンスタレーションダイヤグラムだとシンプルに表現できますが、波形で書くと複雑でわかりにくい図になるでしょう(実際に書きたくありませんが)。





2-IQ変調器とIQ復調器
256QAMの変調と復調を行うためにIQ変調、IQ復調器を使います。
変調も復調も、10MHz発振器と乗算器を使います。送信側では加算器も使います。
発振器は変調のかかっていない純粋な正弦波を生成します。乗算器は2信号の掛け算を行います。



受信側では、IQ検波器という回路で送信側から送られてきたコンスタレーションダイヤグラムを復元します。
先ほどのXY平面で、IがXに対応して、QがYに対応します。


3-送受信の位相合わせ
受信側のIQ復調器で送信されてきたコンスタレーションダイヤグラムを復元するときに問題になるのは送信側と受信側の位相合わせです。
送信側と受信側の10MHzの発振器はお互いに独立していますから、送信側と受信側の位相がずれているのが当然です。
位相がずれていると、送信側で送ったコンスタレーションダイヤグラムが受信側で誤って復元されます。



送信と受信の位相を合わせるために、送信側から特殊コードを送信します。
受信側は特殊コードを受信すると、受信側の発振器の位相を0度に補正します。
本来の256QAMではコンスタレーションダイヤグラム上に256点ですが、特殊コードを追加して258点になります。
特殊コードは、今回の実験のオリジナルの通信プロトコルです。



特殊コードでの位相合わせは、通信開始前の初期化過程で、1回だけ行えばOKでしょうか?



送信側と受信側はお互いに周波数精度の高い水晶で10MHzを作り出していますが、水晶の精度も完璧ではありませんから送受信の10MHzはお互いに
少しだけずれています。汎用の水晶の精度は±20ppmですから、最悪の場合は送受信で周波数が40ppmずれていることになります。
送受信の周波数がずれているとお互いの10MHzの位相が徐々にずれていきます。
位相が徐々にずれていくと、受信したコンスタレーションダイヤグラムがゆっくりと回転します。
仮に送受信の10MHzが40ppmずれているとします。10MHzの40ppmは400Hzですから、1/400秒=2.5ミリ秒で、受信コンスタレーションダイヤグラムは1回転します。
送受信の位相合わせは通信している最中に定期的に行う必要がありますすので、位相合わせの特殊コードは、定期的に送信するようにします。




2015年1月3日 記
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