オリジナルの無線LANをFPGAで作ろう 1ページ目

1-この実験企画について
最近の無線LANは驚くほど通信速度が上がって今や数百Mbpsのものが市販されています。
無線LANが当たり前になってしまった感がありますが、冷静に考えてみると不思議です。
光ファイバや電線でつながっていないのに、どうしてこんなに高速にデータを送れるのでしょうか?
どんな技術が使われているのでしょうか??

この企画は、自分で無線LANを作ってみて無線LANに使われている技術を体験してみようというものです。
無線LANの技術教科書に載っている予備知識にはあまりとらわれずに、気楽にオリジナルの無線LANを作ってみましょう。


2-この実験のブロック図
この実験の大まかなブロック図です。進んでいくうちに、詳細を出していきます。



最近の無線通信の変調復調(※1)は、ほとんどがデジタル方式なっていると言われています。
デジタル化する理由は、昔ながらのAMラジオやFMラジオのようなアナログ方式の変調復調では、性能やコストの点で厳しいからです。
デジタル化する理由については、後で詳細を書きます。
デジタル方式の変復調は、デジタル信号処理の塊のようなものです。
マイコンだと処理速度が不足しそうですので、FPGAで処理します。
通信の周波数帯は10MHzです。実際の無線LANは2.45GHz帯などを使います。この装置に10MHz⇔2.45GHzの周波数変換回路を付け足すと2.45GHz帯での通信ができます。
この実験では電波は出さずに、10MHzの信号を電線で伝送して、擬似的に10MHzの無線通信をやってみます。(※2)
10MHz帯のデジタル波形データをFPGAで生成してDACで10MHzのアナログ波形に変換します。
受信側では10MHzのアナログ波形をデジタル波形データに変換してから、10MHzの電波に載っていた情報を復元します。

変調復調が正しくできたことが確認できるように、送信データ生成部と、受信データの送信データとの照合部が必要になります。
この実験では送信データ生成部は音声を取り込むADCとしました。照合部はDACとしました。
音声をデジタルデータとして送って、受信側で正しく音声が再生されるのを確認します。
16bit-441.kHz-モノラルの通信を目標にします。CDの等倍速の半分ですが、ビットレートは705.6Kbpsになります。

(※1)電波に情報を乗せるのを”変調” 電波に乗った情報を抽出するのを”復調”といいます
(※2)実験とはいえ10MHzの電波を勝手に出すと他の通信の迷惑になるので出してはいけないのです、電波法で決められています

3-変調方式
デジタル通信の変調方式のASK、PSKを一例として説明します。
ASKは振幅に情報を乗せて、PSKは位相に情報を乗せます。
ASKは電波をON/OFFしながらOFF="0" ON="1"としてデジタルデータを送ります。
PSKは電波の位相を0度か180度で切り替えて、0度="0"180度="1" として情報を送ります。



ASKやPSKはシンプルなのですが、占有帯域幅が広いという欠点があります。
ASKやPSKでは切り替わり箇所が頻繁に現れるほど、つまり通信速度(ビットレート)が上がるほど、占有帯域幅が広がります。
身の回りには無線LAN以外にも多くの無線装置がありますから、無線LANだけで広い帯域を占有するのはよくありません。


そこで多値変調を使います。たとえば4値ASKであれば、一度に2ビット送れます。
2値ASKと比べて、ビットレートは同じでも、切り替わり箇所の数は1/2になって、占有帯域幅を1/2にすることができました。


もし16値ASKにすれば一度に4ビット送れますので、占有帯域は2値ASKの1/4になります。言い換えると、2値ASKと同じ占有帯域で、4倍のビットレートで送れます。
多値化数を増やしていって、一度に送るビット数を増やすほど、通信ビットレートはあがります。ですが、ノイズに弱くなるので多値化には限界があります。
この実験では256値の変調に挑戦します。2値ASKと同じ占有帯域幅で8倍のビットレートで送れることになります。
256値変調にはASK、PSKどちらを採用するのがよいでしょうか? どっちも採用します。ASKとPSKの合わせ技の256QAMという変調を行います。
続きは次回に!


2014年12月31日 記
2ページ目に続く

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